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国連特別報告官が職場での毒物曝露に関する人権に警鐘を鳴らす

11.10.18 Editorial
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毎年何百万人もの労働者を病気にさせ死亡させている職場での毒物曝露の人権に関する影響に関して、国連の特別報告官、バスクット・ツンカク氏が説得力のある報告を人権協議会に提出 した。 

この報告書は、労働者の生命と健康に対する多大な脅威を裏付ける複数の人権侵害を解説している。そして、往々にして企業の組織的な圧力を受け、各国政府が安全な労働環境を保証する国際的なコミットメントから目を背ける全般的な後退を強調している。さらに、職場の安全を使用者ではなく労働者に責任を負わせる「行動に基づいた安全管理」の大幅な拡大により起きている権利侵害を露呈させた。そしてこの報告書は、組合が組織化し、闘える、一連の権利に基づく原則を紹介している。

「すべての人は公正かつ有利な労働条件に対する権利を有する」とは、世界人権宣言(第23条)で確約された権利で、さらに世界の大半の政府によって批准された「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」で詳述されている権利である。これには、職場の安全衛生に対するすべての労働者の権利が含まれる。

この報告書が強調する安全で健全な労働の権利は、それ自体が権利であるだけでなく、人権は不可分なため他の相互関係にある権利も網羅する権利である。

これらには、職場で有毒あるいは危険な物質に曝露する影響について完全な情報を得る労働者全ての権利、そして事前の説明を受け同意しない場合危険な作業をを拒否できる労働者の権利が含まれている。この報告書は、「労働安全衛生に対する権利は結社の自由、組織化並びに団体交渉権の権利と切っても切り離せない権利」で、労働者の自己防衛に欠かせないと強調する。

これらの権利の順守・保護・向上に関して、政府と使用者の双方にそれ相当の義務が課せられる。各政府によるこれらの蔓延する義務不履行は、数値で表される。職場の有毒物質への曝露の結果、15秒に一人の労働者が世界で亡くなっている。包括的なデータの欠如(これも政府の怠慢)のため実際の影響が疑いもなく低く見積もられているが、公式な世界全体の死亡者数は、年間270万人の労働者に達している。各政府が労働者の保護の強化や情報、結社の自由及び団体交渉の権利を含む基本的な労働組合権の確保から後退しているのと同様に、我々の職場を妨害し我々の基本的権利を侵害する、増え続ける有害物質の監視からも、各政府は事実上後退している。

労働者が職場で有毒物質に曝露されることにより侵害されている、労働者の人権を順守・保護・実施するために幅広く批准されている既存の国際人権法を基に、現在各政府と企業が義務を負う基盤として、国連人権の枠組みに参照される15の原則をこの報告書は促進させる。具体的には、曝露が生じた際労働者とその家族や地域社会のための有効な治療の必要性や、既知及び潜在的な危険に関する情報開示を拒否する根拠として事業の「守秘」の阻止、そして企業が危険で有毒な作業を保護の有効性がより低い国へ外注あるいは移転したことによる有毒物質の治外法権曝露の責務を含む、刑事責任の厳格な施行などを示唆する。この報告書は、国際基準の危険管理の序列を守り、全てのケースで危険を排除することが優先されるべきだと明言する。

そしてこの報告書は、「労働者の有害物質への曝露は、一種の搾取であると考えられる」と結論付け、児童労働や有毒な化学薬品があふれる農業のようなセクターで働く移民労働者、女性、インフォーマル経済で働く不安定労働者など脆弱な労働者グループに対する搾取の高まりのリスクを強調している。

安全衛生に関する素晴らしいILO条約が多数あるにもかかわらず(報告書で批准と適用は不十分だと明記)、安全で健全な職場の権利は、「職場における基本原則と権利に関する宣言1998」の中でILOが明記している基本的権利の中に明言されていないように、全般的な後退を示している。ILOのディーセント・ワーク・インディケーターは職場での負傷は言及するが、有害物質への曝露には触れておらず、有毒物質への曝露が起因する業務上の疾病は明確に除外されている。

労働者たちが有毒化学製品やその他の危険物質に職場で曝露した結果、甚大な公共衛生危機に直面する。緊急時に緊急行動が要請される。

危険物質や廃棄物の環境的に健全な管理と破棄の人権に対する影響に基づき、国連特別報告官は行動を要請した。IUFはこの報告書に貢献し、その拡散、採択及び実施に向けて行動していく。

この報告書は簡潔にまとめられていて、英語の他、アラビア語、中国語、フランス語、ロシア語およびスペイン語で入手可能だ。組合はこれを重要な新資料として最大限活用すべきである。