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TiSA(サービス貿易協定)に関する闘い:すべてがサービスなら、サービス貿易協定がすべてに影響する

12.03.18 Feature
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2013年より、政府の秘密会議が自らを「サービスの真の友達」と称し、現在と将来にわたり、政府の規制の範疇を超えた20世紀の資本主義のためのルールを制定する「サービス貿易協定(TiSA)」を秘密裏に交渉してきた。本プロジェクトはアメリカ、EU、日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、韓国等の豊かな国々や、これらの国を代表する企業によって推進されてきた。その戦略的な目的は、こういった国々や企業をWTOの組織に置き換えて、国際的な取引と投資の枠組みに定着させることである。

オークランド大学の教授であるジェーン・ケルシーによってIUFのために作成された新しいレポート (TiSA: Not our Future!は、IUFの各セクターにおける労働者に対するTiSAの潜在的影響を密に調査することで、企業の権能の範囲と目的を把握し、労働運動、社会的・民主的統治に対するTiSAのより幅広い解釈を明らかにする。


レポートは、TiSAの複雑なルールの内容を平易な言葉で説明しており、どのようにしてそれらのルールを企業アジェンダに組み込むかを説明している。TiSAと、蘇った包括的かつ先進的TPP協定(CPTTP、以前のTPP)のような、他の大きな貿易協定の「サービス取引」の構成要素は、一方でWTOでの企業の未完成のアジェンダを完成させるために、公的及び民間のサービス、金融、投資、国内規定、政府の調達等における、強制的なグローバル・ルールの設定に向けてたゆまぬ努力を続けている。しかし、新しいサービス取引モデルは、このような馴染み深い目的と、Big Techの台頭で表現されたデジタルベースのテクノロジーの説得力で融合させる。


TiSAにおけるeコマース(電子商取引)のルールとは、オンラインショッピングのことではない。アルゴリズムと、企業発の、仕事を含むすべてをデジタル化するのに欠かせないデータ・フローのコントロールのことである。WTOのルールが20年以上前に策定された時、クラウド・コンピューティングからのデータ・ストリームによるデジタル高精度農業は存在しなかった。ラボで作られた肉や乳製品、3Dプリンター・ミール、「スマート・フィッシング」、Airbnb、アマゾン・プライム・フード・デリバリー、UberEats、そしてデジタルベースの労働者監視技術も然りである。


現在のWTOのルールでは、食品加工、飲料製造、農業、漁業等のIUFセクターの生産物は、国境を超えた途端、商品と捉えられる。TiSAは、別のルールを導入し、そのルールの下で、これらのセクターの労働者によって行われる現在・将来の全てのタスクを、分離した個別の「サービス」として、TiSAのルールに縛られず、しかしそのルールによって守られている、多国籍の「サービス提供者」にアウトソースされるサービスとして扱うことができる。これらのサービス提供者は、それを運営する国に物理的に存在していなくてもよく、規制や責任から守られる。


同様のルールを、他のすべての製造業と採取産業に当てはめられる。TiSAは、IUFセクターですでにサービスとして扱われているホテル、レストラン、ケータリング等に対し、外注とパートへの切替の過程において新しい推進力、動機付けとなっている。


レポートでは、TiSAIUFセクターにおいて企業のパワーの集中を深化させ、各セクターの労働の分断や不安定化を加速させ、労働者たちが職場、全国的及び国際的なレベルで組織化と団体交渉を行う能力を蝕む。


TiSAのルールによって労働者たちはこれらの新しいテクノロジーの適用と影響について交渉する可能性を根本的に減らされる一方、デジタル・オートメーションは加速し、潜在的に大量の雇用喪失を生む。同時に、金融サービスに関するTiSAのルールが、新しい法または規制を通じて、危機に陥りやすい金融セクターを統制する意義深い努力を排除してしまう。刹那的で投機的な金の流れは、食品製造やグローバル・エコノミーを破壊するより強い力への流れを加速させてしまう。 

取引や投資の新しい時代を迎えて、TiSAや同様の規定を理解することは、それらを無効化するのに欠かせない。レポートにも記載がある通り、TiSA交渉は、目下のところ、それに反対する人々によって政治的に毒だとして、保留になっている。それが確実に放棄されることが短期的なタスクとなっている。TiSAを無効化することは可能であり、必要なことである。しかし、すべてが取引可能なサービスである今の世界で、それらは、見せかけを変えて再浮上するだろう。まるで否決された多国間の投資協定の合意が、往々にして地域間、二国間貿易協定の中に再浮上するかのように。労働運動とその支持者が直面するより大きな課題は、労働者の権利を守り、その持続的な生計、公共サービス、環境と世界の食料資源を守るのに必要とされる民主的な政策を再び求めるために、貿易と投資取引の肥大化した仕組みを解きほぐすことである。



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