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金融陶酔、広がるレイオフ、団体交渉

26.03.12 Editorial
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労働者に対して、レイオフの理由としてありとあらゆるものが上げられてきたが、なおかつ、つねにもうひとつの理由がある。あなたの会社で雇用を削減するという次回の呼びかけは、競争における雇用削減と株価に関するメッセージに包まれているかもしれない。

2月23日に、グローバルな消費者製品メーカーでは最大の売り上げを誇るプロクター&ギャンブル(P&G)が、非製造部門従業員の10%にあたる5700名の雇用削減を発表した。アナリストは、この『わくわくするニュース』を『大きな前進』と歓迎した。P&Gは、他の経費削減策と共に、この雇用削減で利益が9.5%増加すると主張した。雇用削減で会社がもっと機敏になるとCEOは熱狂した。アナリストは「買いだ!」と金切り声を上げた。24時間以内に会社の株価は2.3%上昇した。

「P&Gは、ユニリバーなどの同業社に影響を与えうる柔軟性を作り上げるだろう」とアナリストの一人が英国のガーディアン紙に言った。そして「ユニリバーに対する投資家の投資意欲を損なうかもしれない」と観察した。そして、この投資意欲は、確認された。従業員年金基金を含めた投資家らは、株を投げ売った。24時間以内に、ユニリバーの株価は3%下がった。

ユニリバーは、2011年度に素晴らしい業績を上げた。先進諸国市場は、飽和市場と見なされているにもかかわらず、現状維持以上の業績だった。(もちろん、それでも年金に対する攻撃と事前に計画された雇用削減の実施は止めなかった)この理由のひとつに、その市場地位を利用して、値上げを断行し、収入を急増させ、高い内部経費にうまく対応したことがある。

アナリストは、ユニリバーに満足していた。しかしそれはP&Gが、雇用削減で競争力を増加させるまでの話だった。これは、二社が製品市場だけでなく、金融市場でも競争しているからだ。金融市場では、アナリストは、業績を測るために単純化された比率を使う。この競争の尺度のひとつは、売り上げに対する従業員比である。類似業種の会社は、より少ない従業員で高い販売利益を上げるかを見るためにお互いにベンチマーク作業を随時行っている。(社内で、ベンチマーク部門が、従業員の競争を強化するためにこの測定基準を使っている)

人気のあるウェブサイトInvestopediaによると、従業員一人当たりに対する売り上げ率は、会社を運営するのがいかに高いかの広範囲の指標になるということだ。これは、もちろんナンセンスだ。人件費は、事業を行う上での多くの要因のうちのたったひとつの要因に過ぎず、そして必ずしも最重要なものではない。この点は、四半期ごと、あるいは毎日の株価の動きに固執する投資家には、意味をなさない。この単純な測定基準では、P&G、あるいは他の製造会社で、非製造の従業員が含まれているかどうかは全く関係がない。考慮されるのは、人数だ。

従業員が単に高価だという世界で、P&Gでのレイオフは投資家にとって良いニュースで、ユニリバーの労働者にとっては悪いニュースである。彼らは、即座に切迫感を感じた。株価が回復し、次の投資家のコールでともかくもすべては忘れ去られる。しかし、雇用は、一旦喪失したら、回復しない。

四半期報告に慌てふためいて対応することを、常に経営者は『戦略的である』と表現する。我々は、これに対し、伝統的に交渉を形作ってきた売り上げ、経費、その他の数字を超えて交渉の準備を広げなければならない。経営者の決定を動機づける純粋な金融力に光を当て、競合他社の雇用削減が自社の職場と長期計画に与える影響に関して会社に十分な説明を要求しなければならない。