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曝露された投資条項から、TTP「貿易」交渉の核心に企業の力の掌握があることが判明

12.05.15 Editorial
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現在アメリカと環太平洋の11か国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム)が交渉中の巨大貿易・投資の取り決めであるTTP協定の投資条項が曝露され、IUFをはじめ、この協定および類似する協定を非難している他の団体の見解が全面的に確認された。それは企業が力を掌握し、多国籍投資家の影響力と執行力を拡大させるためのもので、意図的に「包括貿易協定」に見せかけている。

325日にウィキリークが曝露した投資に関する条項と、
https://wikileaks.org/tpp-investment/TPP-Investment-Chapter-Analysis/pag... 

 

合わせて公表された「パブリック・シチズン」の詳細な分析によれば、締結国の国や地方レベルで、裁判所や政府のライセンスおよび特許当局の法律、規制、決定に、企業投資家が非公開の法廷を通じて直接異議を唱えることができる力を拡大させている。並行する企業法制度により、多国籍企業家たちは政府を相手取り、現行あるいは将来予想される利益に影響を及ぼす法的あるいは規制措置の「補償」を求めて提訴することができる。1996年の北アメリカ自由貿易協定(NAFTA)で示された地域協定や二国間協定で確立された、投資家が求める争議解決メカニズム(ISDS)は、政府が環境、労働者及び消費者の安全衛生や手頃な値段の医薬品、公共衛生、公有地および資源を守ったり、クリーン・エネルギーと地元の食料制度を推進し、また財政的安定のために資本の流れを規制する能力を阻止するため、衝撃的な効力を用いた。(関連事例は、IUFが出版した「民主主義を脅かす貿易協定」を参照)

 曝露されたテキストには、以前の類似条約の最も毒性の強い要素が盛り込まれていて、企業にとって、将来の収益性に影響を与えるような新たな官制規制措置や行動が原因で起きる「間接的な収用」に対し補償を要求したり、また「想定される」将来の利益を基に補償を要求することが可能になる。「条約の最低基準」を主張する企業は、「投資先に対し法的及び業務上の環境を変えてはならない」という拘束力のある義務を引用する。つまり企業は、既存の法律や規制に異議を唱えられるだけでなく、ISDSを用いて政府の規制行為から生じる「想定される損失」に対する補償について告訴することができるのだ。かつて投資の保護は実物資産に限定されていたが、知的財産、金融資産及び規制許可にまで拡大している。

TPPA及びアメリカ-EU間で交渉されているTTIPに対し大規模な反対が起きているにもかかわらず、また特にISDSに関してかつてないほど公に討論されてきたにも拘わらず、パブリック・シチズンの分析は、今回曝露された投資条項が2012年に曝露された内容よりも投資家にさらなる力を提供していることを示している。TTIPでは投資についてまだ交渉が続いていて、草案がまだ明らかになっていないが、TPPAの条項は想定の予告編以上を呈している。

企業の投資の「権利」は、これら双方の協定の本質である。それらは貿易に関するものではなく、我々が必要とするディーセントな仕事についてでもない。

ISDSは投資家に、さらなる富を可能にし、民主的な統治を妨害する強力な武器を与える。しかしそれは、この課題を強化する唯一の手段ではない。貿易と投資の協定は、追加の国別の投資争議メカニズムを含み、投資家の要求は契約を通じても強要される。アメリカの右派のケート・インスティチュートは、あまりにも大きな反対が起きていることから企業のロビーストにISDSを黙って放棄し、これらの他の手段を通じて条約交渉内の目的を追求したほうが良いと助言した。従ってこれらの協定の反対派は、「企業が民主主義を攻撃する」ことから条約全体を守る必要があると断定するべきである。