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人材派遣業者のグローバル攻撃を撃退

15.12.10 Editorial
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使い捨て雇用が増えている。グローバルな人材派遣業者は、世界攻撃の新たな戦いの場としてロシアを標的にしている。

 

ロシア議会の2名の議員(1人は鉱山金属労組の会長)が同国の人材派遣業者を事実上禁ずる法案を導入した。この法案は、労働者と真の使用者の間に業者の媒介を通じた三角関係の挿入を禁じ、直接の雇用関係が存在する場合はすべて、直接雇用契約の使用が要件となる。このために人材派遣業者の国際協会であるCiettが活発に関与し始め、労働者の利害を守るという名目でロシア議員にロビー活動を行っている。

 

現在、ロシアの派遣労働者の状況はあいまいだ。派遣労働者の法律上の基準はまだ確立されていないが、そうかといって、はっきりと非合法というわけでもない。この不確実な身分のために人材派遣業者の拡張にブレーキがかかっている。人材派遣業者は、使い捨て雇用の金になる市場の拡大に野心的であるにもかかわらずだ。同国の人材派遣業の雇用が最大に見積もっても現在まだ10万ということにロシアの労働者は感謝できるだろう。しかし、ロシアで他の形態の不安定雇用は存在する。旧ソ連で法律的なあいまいさが継続している。ナミビアでは人材派遣業者が禁止されたが、人材派遣業者がロビー活動を行い、基本的権利の擁護を理由にこの法律に異議を唱え、訴えに基づきこの法律は廃止された。同様の討論が南アフリカでおこっている。COSATUは、労働契約の範囲の拡大に強く反対している。

 

Ciett 労働者の声?

 

Ciettは、国際的な大手人材派遣業者と全国連盟のネットワークに支持され、人材派遣事業の利害を代表する正式な代弁者だと自称する。法律上の障害にぶつかり、発言のトーンが変化している。Ciettが最近ロシア議会議長に宛てた書簡の中で、人材派遣業の禁止は、従業員の利害を守る観点から不適当だと言っている。

 

Ciettによると、人材派遣業者は、他では作られないであろう仕事を作り出すことで労働者階級の利益に供与し、その結果、失業を減少させ、常用雇用への足場を提供し、人材派遣業者を通じて臨時に雇用される労働者の保護と柔軟性の最適なバランス達成を助けるということだ。

 

この高尚な目標を追求して、Ciettはロシア連邦に民間人材派遣業者に関するILO条約181号の批准を要請した。

 

この議論で、我々は現実から乖離し、純粋なイデオロギーの分野に入る。雇用は労働の下請け化ではなく投資から生まれるものだ。ここ何十年もの間の不安定雇用の急激な増加は、貧困、不均等、不安定さが増えたことと労働組合と団体交渉力の急激な減退に付随する。ここ何十年かの間に人材派遣業者は、世界的な成長を遂げ、従業員数、利益、ロビー活動先を拡大した。人材派遣業の仕事が常用雇用への道の足場であることを示す確固たる証拠はない。一方で、あらゆる部門で企業は、直接雇用を以前はほとんどなかった不安定雇用に取って替え、今ではこれが標準になっている。IUF組合員、そして労働者は一般に、Ciettが広めている柔軟性と保護の最適のバランスをまだ経験していない。

 

ILO181号条約の使用と濫用

 

181号条約は、人材派遣業を既に操業されているかあるいはその設立の法律の基礎が考慮されているところでその経営を規制しようとするものである。本条約は、農業の安全衛生に関する184号条約が農薬の使用を拡大するためのブループリントではないと同様に、人材派遣業者を促進する手段ではない。

 

比較的短い条約本文中で、民間職業紹介業者の法律上の身分を決定する基本的な問題から始め、政府が使用者および労働者を最も良く代表する組織とあらゆる段階で協議する必要がある問題を特に7つ言及している。この協議は、背後で行われるロビー活動や限定された議会討論に制限されるべきではなく、協議の結果の妥当性を損なうものでもない。組合はあらゆるレベルで、労働市場規制の基本的な要因を形付ける決定に積極的に関与すべきで、法律上の身分の討論は、詳細に過ぎず、人材派遣業者が統治地域で操業を許可されるべきかどうかという基本的な問題でないと言われるべきでない。排除は、明らかに選択である。

 

Ciettは、ロシア労働者を職場訪問し、使い捨ての仕事の利益について説明するよう要請されるべきだ。 

 

条約によると、政府は、労働者と使用者団体の代表と協議をした後で条約の条件に従い、特定のカテゴリーの労働者あるいは経済活動の部門に関して派遣業者の操業を禁止しうる。ベルギー、スペイン、ノルウェーは、それぞれ異なる国だが、農業、ホテル、建設、危険な職業、公共部門の派遣労働を違う時期に禁止した。国がこの条約を批准すれば、公共、民間のそれぞれのそして全ての職場に侵入する白紙委任状を手にするということではない。政府は禁止と制限を課する権利を維持するのだ。

 

ILOと不安定雇用ー活動継続

 

使用者は、自分たちの製品をILOの名前で熱心に売りこんでいる。このためにILOが不安定雇用と労働組合権についてどんな発言をしているか詳しく見ていく必要がある。

 

ILO条約は、基準を設定する。同じく重要なのは、条約が現実世界の条件で試されるために判例である。判例(変化する条件の下で意味と基準適応の継続的推敲)は、使い捨て雇用に対する闘争を含む労働者の闘争を通じて発展する。韓国とコロンビアの労働組合の申立に対してILO結社の自由委員会は、最近、労働者が利用者企業、すなわち真の管理者と団体交渉を行うことを妨げる労働の契約化は、結社の自由と労働者の使用者との団体交渉権の中核条約である87号と98号の価値を減じると決定した。

 

下請けの責任、団体交渉力の低下

 

派遣業者の重要な活動、そして最も決定的なものは、条約181号の条項1(b)に定義されている労働者に対して業務を割り当て及びその業務の遂行を監督する自然人又は法人である(以下「利用者企業」という。)第3者の利用に供することを目的に労働者を雇用することから成るサービス』。これは、まさに労働者を組織し、業務を割当て、職員の数と雇用条件を決める真の使用者があらゆる責任を回避し、労働者が権利を行使するのを妨げるメカニズムである。

 

派遣業者を通じた不安定な労働者の雇用は、かなり大きい部分であるが、経費削減のみが目的ではない。これは、縮小、時には、消滅点までの縮小である。従って、労働組合が労働条件を交渉する団体交渉単位の規模すなわち力の縮小である。条約181号は、労働者が結社の自由の権利を正式な使用者、すなわち派遣業者に対して行使する権利を断言しているが、真の使用者に対しては、何も言及していない。これらの状況で結社の自由と団体交渉の権利は、実際には行使できないため純粋に形式的なものである。

 

組合は、真の団体交渉力を使い、使用者の派遣労働者活用能力を急速に制限する協約を交渉する能力が益々求められている。スウェーデンは、民間職業仲介事業所を1994年に合法化した。そして使い捨ての仕事が急速に職場に広がった。何年にもわたる闘いと年初の全国スト実施の脅かしで、スウェーデン食品労組は、全国協約を勝ち取った。この協約の規定は、派遣労働者は、現地労組との交渉がなくては導入できないというものだ。

 

派遣業者の旺盛な食欲は、彼らが派遣する労働者は、セクター内で明確なカテゴリーとして処遇されないことを意味する。彼らはますますあらゆるセクターに存在を広げている。このため人材派遣会社に関するグローバルユニオンの共同原則は、他の手段と合わせ、派遣労働者は、利用者企業の他の労働者と同じ労働協約にカバーされるべきであると主張している。

 

ディーセントワークのアジェンダの進展は、職場における組織化された交渉力の減退と分割の継続の順応ではなく、巻き返しを意味する。Ciettとその支援者たちは、労働法に対する影響の大きな変化が問題となり、労働者の権利が不正に扱われる時に、挑戦を受けるべきだ。